多元文化構造論I

担当教官:竹内 信夫
講義題目:8・9世紀日本文化の構造(日本的仏教文化の形成)

8・9世紀の日本律令体制期における仏教受容のあり方は6・7世紀のそれとは大きく異なっている。7世紀初頭に開始され、朝鮮半島の騒乱によって中断されていた遣唐使派遣が新文化摂取の国家的プロジェクトとして再編され、渡来僧・留学僧によって中国唐朝の新しい仏教が直接に伝えられるようになった。その結果、日本的律令国家の精神的基盤をなす南部六宗の成立、それに続く天台・真言密教教団の成立を見て、日本文化の中に仏教が不可欠の要素として組み込まれる。文化史的に見ればこの時期に大きなパラダイムの変換が生じているのである。

その様相を基本的な資料を読みながら概説する。仏典と仏教文献の読み方の基本もあわせて教授する予定である。受講希望者は、『論集・奈良仏教』全五巻(雄山閣)、佐伯有清『最澄と空海』(吉川弘文館)、高木訷元『空海 生涯とその周辺』(同)、竹内信夫『空海入門』(筑摩新書)、義江彰夫『神仏習合』(岩波新書)などに目を通しておくこと。