比較ナラトロジーI

担当教官:猪口 弘之
講義題目:〈日記〉論 (現代のドイツ語文化圏に限定して)

個人の日記は、本来は他人に読まれることはは予想せず、日々の出来事や所感を備忘のために書きとめておくものだろう。しかし、一般の史書には残らないような、社会の裏面史や庶民の生活史を語る、貴重な記録となることもある。
一方、〈絵日記〉や〈交換日記〉は論外とし、紀行類や回想録も除いたとしても、他人に読まれる(ないしは読ませる)ことを意識して書かれる日記もかなりあり、現代に公刊されるほとんどは、その部類に入るのではないだろうか。
〈日記〉が個人の内面の直接的な記録たりうるが故に、偉大な人物の日記には、単なる伝記研究の資料を超えた意義を有するものが少なくない。さらに〈日記〉のスタイルを借りた文学作品やエッセイも昔から存在する。
P.Boerner:Tagebuch 等を手がかりに、〈日記〉の本質や意義、〈詩(嘘)と真実〉の問題等について考察しつつ、現代ドイツ語圏における重要な実例のいくつかを原文で読む。なお、詳細は参加者との協議の上で決定する。