担当教官:猪口 弘之
講義題目:グリム《ドイツ神話(学)》購読
グリム兄弟のうちの兄ヤーコプの手になる純学術書の、第四版(全三巻)の一部を読む(学期ごとに別の部分を採り上げる予定)。〈神話〉といってもその領域は相当広く、いわゆる〈迷信〉を含めた広義の〈民間信仰〉に関連するすべてを包摂するものと了解すべきであろう。
〈ドイツ神話〉(deutsche Mythologie, 英訳では Teutonic mythology)という呼称自体は、いかにも十九世紀前半のドイツのナショナリズムとロマン派思潮とに彩られた概念であり、もはや学術用語として一般に通用するものではない。その他にも、本書の基本構想については批判すべき点があるが、本書がとくにヨーロッパの民俗学および関連分野の研究の発展を決定づけた、その歴史的意義は不朽のものであり、また、本書に記録された膨大なデータは、今もその貴重な意味を失ってはいない。日本について考える際にも、本質的な比較のための重要な手がかりとなるだろう。
演習の進め方の詳細は、参加者と協議の上で決定する。