担当教官:大石 紀一郎
講義題目:記憶の表象とそのメディア
われわれが持つさまざまな記憶は不変ではない。同一人物の過去の記憶でも、それをふりかえる時点や見つめる視点、あるいは表現の仕方によって変わるし、同じ歴史的現象でも、異なる立場から正反対の評価を受けることがある。それにもかかわらず、われわれは一定の記憶を共有し、文化的に伝承することによって、集団や社会のまとまり、宗教や国際社会の価値観における共通性を維持している。そこでは芸術的表現が、さまざまな記憶を表象するメディアとして機能し、メディアの発達はわれわれの記憶の表象や形成を変化させてきた。この授業では、参加者とともに記憶の理論に関するドイツ語の文献を読みながら討論し、それぞれの関心に応じて記憶の表象とメディアの関係を取り上げていくことにする。