文化コンプレクシティ演習III

担当教官:義江 彰夫
講義題目:『古事談』を読む

『古事談』は、平安末期から鎌倉初期(12世紀末期~13世紀初期)にかけて中堅貴族として活躍した源顕兼の撰とされる説話集である。構成は、王道后宮・臣節・僧行・勇士・神社仏事・亭宅諸道からなり、上は天皇から下は庶民に及ぶ。話の時代範囲は大化前代から鎌倉初期にわたり、話の内容は正史類にはおよそ登場しえない政治と社会の裏面を淡々とかつ赤裸々に扱ったものが多く、古代から中世にかけての社会と文化の実態を知る貴重な宝庫である。また各説話は、出典・類話などの分かるものが比較的多く、撰者の恣意的解釈が比較的少ない点でも、貴重な書物である。今学期は、参加者諸君の関心に応じて扱う内容を決め、各説話を丁寧に読み、出典・類話との関係、史実との照合などを踏まえたうえで、本説話集の独自性と文学史的位置、それを生み出した院政時代の精神状況に迫りたい。