文化コンプレクシティ演習II

担当教員:大石 紀一郎
講義題目:ヨーロッパ言説を読む

現在、今後のEU拡大に際して、政治的単位としてのヨーロッパの境界だけでなく、「ヨーロッパ」に共通の価値とは何か、「ヨーロッパ」の定義とは何かが新たに問い直されている。統合の進展と市場の動向は個別の政策課題に関する各国の不一致をむしろ際だたせるようになっており、イラク戦争に際しては各国の対応が大きく分かれた一方、アメリカの政策に対する疑問は各国世論に共通のテーマとなった。こうした同時代的情況を背景として、この演習では18世紀末から現代まで、さまざまな思想家や文学者によって展開されてきた「ヨーロッパ」に関する言説をドイツ語圏のテクストを中心として読む。宗教と啓蒙、ナショナリズム、世界大戦、冷戦と政治・経済統合、文化的多様性、対米関係など、さまざまな参照項目に関連する言説のパターンの歴史的変化を見ることによって、政治文化論の課題としての「ヨーロッパ」を考えることにしたい。日本語の翻訳があるテクストもあるが、参加者にはドイツ語の能力があることが望ましい。