文化コンプレクシティ演習IV

担当教員:岡部 雄三
講義題目:『砂漠に咲く花』――マイスター・エックハルト研究

唯一神教は他宗教に対して非寛容である、とはよくいわれるところである。しかし、多神教ならば寛容であるとは必ずしも言えない。ことはそれほど簡単ではないのである。
他者に開かれた宗教のあり方を真剣に模索した人々のなかに、14世紀初頭の思想家マイスター・エックハルトがいる。彼のユニークな神体験・神認識は、近代的人間を確立させる決定的な思想的起爆剤の一つとなった。一般信徒や尼さんらに対してキリスト教の精髄をわかりやすく説き聞かせた彼のドイツ語説教は、その躍動感、斬新な着想、創造的思考の深さ、詩情あふれる文学性ともあいまって、驚くほどアクチュアルな問題の数々を提起している。これらの説教を読み解きながら、神とは何か、人間の自立とは何か、瞑想と実践の差異、学問批判、魂のなかにおける神の子の誕生、ニヒリズム等のテーマについて検討する。なお、この演習はキリスト教入門をも兼ねるものである。
テキストは田島昭久編訳『マイスター・エックハルト説教集』(岩波文庫)を用い、随時プリントも配布する。
参加希望者は、最初の授業に必ず出席のこと。評価は平常点とレポートによる。