神話と文化II

担当教員:岡部 雄三
講義題目:外なる人と内なる人——『ドイツ神学』研究

宗教改革者ルターの手によって1516年に初めて刊行され、同時代はもとより後世にわたって広くかつ深く影響を及ぼしつづけた無名氏の著書『ドイツ神学』(Theologia Deutsch, 15世紀末成立)を読み解いていく。宗教改革の理念を先取りしていると称揚されたこの小冊子は、照明=再生体験、第二のアダム=イエス・キリスト体験を中核に据えながら、人間の堕落と完全な人間への再帰、エゴイズムと自由意志の相克、自我の新たな理解、歴史と終末、既成教会と異端的教説の対立など、近代を形成していくうえに欠くことのできない諸問題を縦横に呂音自他ユニークな書である。そこには、学問僧や神学者ではない一市井人が一般の人々に向かって熱く語り出した新しい思想、精神、文体誕生の生々しい瞬間が躍動している。なお、この演習は、キリスト教の基本的な考え方の入門をも兼ねるものである。
テキストは、山内貞男訳『ドイツ神学』(『ドイツ神秘主義叢書』第10巻)を用い、随時プリントを配布する

受講希望者は、最初の授業に必ず出席すること。評価は、平常点とレポートによる。