担当教員:岡部 雄三
講義題目(夏学期):外なる人と内なる人——『ドイツ神学』研究
宗教改革者ルターの手によって1516年に初めて刊行され、同時代はもとより後世にわたって広くかつ深く影響を及ぼしつづけた無名氏の著書『ドイツ神学』(Theologia Deutsch、15世紀末成立)を読み解いていく。宗教改革の理念を先取りしたと称揚されるこの小冊子は、照明=再生体験、第二のアダム=イエス・キリスト体験を中核に据えながら、人間の堕落と完全な人間への再帰、エゴイズムと自由意志の相克、自我の新たな理解、歴史と終末、既成教会と異端的教説の対立など、近代を形成していくうえに欠くことのできない諸問題を縦横に論じたユニークな書である。今学期は、主に同書に見られるイエス論を読み、イエスとは何者と考えられていたかを明らかにしていく予定である、なお、この演習は、キリスト教の基本的な考え方の入門をも兼ねるものである。
テキストは、山内貞男訳『ドイツ神学』(『ドイツ神秘主義叢書』第10巻、創文社)を用い、随時プリントを配布する。
受講希望者は、最初の授業に必ず出席すること。評価は、平常点とレポートによる。
講義題目(冬学期):死と生のドラマ——ヴァイゲル『キリスト教についての対話』研究
平凡な一牧師としてその生涯を終えたかに見られていたヴァレンティン・ヴァイゲル(1533-88)であったが、その遺稿が17世紀初頭に次々と刊行されるに従い、そのユニークな異端的思想は後世に深い影響を与えつづけ、過激な神秘主義ヴァイゲル派を生むことになった。本学期は、『ドイツ神学』、タウラー、ルターなどの宗教改革者、パラケルススなどの自然哲学者の知的伝統を踏まえて執筆された最晩年の著書『キリスト教についての対話』を講読する。死、聴聞者、説教師、牧師、博士ら7名のあいだで交わされる、キリストの死と生の意義を探究するこの対話篇は、文学的感興に優れているばかりではなく、論争に明け暮れた近世初頭のキリスト教が直面した諸問題の豊かな地平をなまなましく描写しており、死と生に関するきわめて現代的な問題を提起がなされ、霊と肉の不思議な身体性の世界を展開している。なお、この演習は、キリスト教の基本的な考え方の入門をも兼ねるものである。
テキストは、ヴァイゲル著(山内貞男訳)『キリスト教についての対話』(『ドイツ神秘主義叢書』第12巻、創文社)を用い、随時プリントを配布する。
受講希望者は、最初の授業に必ず出席すること。評価は平常点とレポートによる。