比較モダニティ論I

担当教員:井上 健
講義題目(夏学期):翻訳学と翻訳文学研究

2009年冬学期に引き続いて、主要な翻訳論、時代を画した翻訳文学を取り上げて、翻訳とは何を翻訳するのか、翻訳可能なもの、翻訳不可能なものとは何か、など翻訳をめぐる諸問題を再考したい。今日、翻訳学(Translation Studies)はもはや他学問の補助的分野であるにとどまらず、独立した学問領域として、言語学や比較文学研究を凌駕するほどの活況を呈している。今期はそうした翻訳学の最新の成果にも、十分目配りしておきたい。

講義題目(冬学期):近現代日本の「幻想」短篇を読む

2009年度夏学期に引き続き、日本近現代文学に、テーマ研究、ジャンル研究の立場から、《幻想文学》という視点によるアプローチを試みたい。日本《幻想文学》の系譜と、西欧近代の《幻想文学》のそれとの対比的読解を試みることによって、西欧的な枠組みでは律しきれない、「日本的幻想」の構図のごときものを抽出することができればと考える。《幻想文学》を論じるための主要な批評方法論についても、その有効性のほどを、適宜、検証していきたい。
代表的な《幻想文学》論を参照しつつ、《幻想文学》ジャンルの再定義を行った後、毎回、原則として短篇小説1篇を取り上げて、テクスト精読を通じて、その幻想性の解明を試みる。本講義は、原典味読(explication de texte)の演習も兼ねる。