日本文化基礎論I

担当教官:義江 彰夫
講義題目:犯罪・刑罰の社会史的研究

犯罪は、ある権力や社会集団の価値観・秩序意識に対する挑戦と破壊であり、刑罰は、この犯罪で壊された権力や社会集団のシステムや秩序を、その価値観・秩序意識に沿って回復するための制裁行為である。
犯罪や刑罰をこのように社会史的に見直すと、犯罪観や刑罰の形態を逆読みすることを通して、各時代の公私の権力や種々の社会集団を支えていた価値観と秩序意識の特質を探り当て、この権力や社会集団の性格を新たな次元から位置付け直すことが可能となる。また、同じ民族・社会でも時代の推移によって公私の権力や社会集団の質が変わるにともない、犯罪観や刑罰の形態も変化する。したがって、犯罪観や刑罰形態の変容を解明することは、その民族・社会の歴史を新しい次元から捉え直す重要な方法となる。
今学期は、以上の視点から、特に刑罰形態を手懸かりとして、新たな日本前近代史の再構成を試みる。