比較文学論III

担当教官:竹内 信夫
講義題目:比較文学研究の課題と方法

比較文学(littérature comparée; comparative literature)は、国民文学最盛期の19世紀末にヨーロッパで誕生した。文字通りには「比較された文学」であって、その比較論的視野に収められているのも既に認知された国民文学(例えば、フランス文学、イギリス文学、等々)であった。20世紀に入れば、そのような狭い文学研究の枠組みは文学そのものによって乗り越えられるようになるが、それをも国民文学へ回収しようとする力学は働き続けて現在に至っている。
翻って考えれば、文学が何らかの境域のなかに閉塞することはない以上、文学に対する学問的反省としての文学研究は、常に、比較論的視点を含まないわけにはゆかない。そのことを踏まえれば、作品からそれが固有に含む比較論的ファクターを取り出すことが、比較文学の本来の課題であるともいえよう。本講義では、歴史的に展開された比較文学の実態を参照しつつ、後者の意味での比較文学研究の課題と方法を考えてみたい。
受講者には、毎回事前に課題を与え、レポートを出してもらう。そのレポートをコメントする形で、1、2の問題設定を行いながら講義を進める。受講者の欠席は原則として認めない。文献、レポートの書き方などの詳細は授業開始時に説明するので、受講希望者は初回に必ず出席すること。

教科書及び参考文献: