担当教官:猪口 弘之
講義題目:日本の説話文学を読む
われわれに多少ともなじみの深い《今昔物語集》や《宇治拾遺物語》以外にも、性格もさまざまな説話集が数多く編まれており、その全容を一眸のもとにおさめることなど、もとより至難の業である。ここではむしろ、国語国文学(日本語学・日本古典文学)・仏教思想・歴史等に関する専門的知識をほぼ全く持ち合わせないことを共通の前提として、テクストの字句の基礎的な読解そのものについては新旧の《日本古典文学大系》等の注釈や解説に教えを乞いながら、なるべく多様で新鮮なアプローチからの〈読み〉を試みたい。
これらの説話の数々が、口承・書承を問わず、きわめて広義の民間説話(神話・伝説・昔話等)との深い関係を有することは、云うまでもない。また、明らかにインドや中国に由来する仏教説話等を除くとしても、遠くヨーロッパにも及ぶ広汎な世界の民間説話等との構造的比較によって、思わぬアスペクトが示されるものがあると期待される。ただし、表面的な比較によってきわめて短絡的な結論を出し、それで自己満足することのないよう、常に自戒を怠らぬことも必要となろう。
参加者には何よりもまず、討論への積極的参加を期待する。