日本文化基礎論I

担当教員:桜井 英治
講義題目:中世日本経済の特質と東アジア

近年、中世日本における市場経済の発達を高く評価する見解が定着しつつある。こうした研究の方向性自体はおそらく誤っていないが、ただ、このことをもって手放しの中世賛美に陥ることは避けねばならない。中世の経済を正当に評価するためには、近世経済への連続/非連続の問題を視野に入れつつ、また他の東アジア諸国・諸地域の動向とも比較しながら、中世日本の市場経済を成り立たせていた固有の環境・構造を探ることが必要であろう。本講義では、主として中世の貨幣動向、産業・流通構造、価格メカニズム、労働・時間観念、信用・金融の実態、幕府財政や贈与経済とのかかわり等を論じながら、上記課題への接近を試みたい。