担当教員:井上 健
講義題目:アメリカ文学と「翻訳」
言語学者Roman Jakobsonの名高い定義によれば、翻訳は、 (1)言語内翻訳(intralingual translation)、 (2)言語間翻訳(interlingual translation)、 (3)記号間翻訳(intersemiotic translation)の3カテゴリーに分かれる。本講義では、 Jakobsonの定義に沿って、 Jack London、Anderson、Hemingway、Fitzgerald、Salinger などの20世紀アメリカ小説がいかに日本語に「言語間翻訳」されたか、 Dreiser、Hemingway、Fitzgeraldなどの作品が、映像芸術にいかに「記号間翻訳」されたかを具体的に検討する。「翻訳」がいかなる意味生成に関わったのか、「翻訳」の過程で失われるものは何か、「翻訳」を介在させてもなお変容しないものとは何なのかを見きわめながら、国境、言語、ジャンルの壁を越えて、アメリカ小説がいかに翻訳可能(translatable)であるかについて、翻訳演習を適宜織り込みながら考察してみたい。
以下の項目について、順次、講義する。
*英日翻訳の方法、誤訳論、悪訳論、直訳論、創訳論
*Jack Londonとその翻訳
*Sherwood Anderson, F. Scott Fitzgeraldとその翻訳
*Ernest Hemingwayとその翻訳
*マイノリティ文学翻訳の系譜:William SaroyanとJewish Writers
*J. D. Salinger:訳し直しの大義をめぐって
*言語と映像の理論:VisionとVisualityをめぐって
*写真芸術とアメリカ・リアリズム文学
*Alfred StieglitzとDreiser、Anderson
*Eisensteinにおけるアメリカ:モンタージュ理論の成立と展開
*小説と映画の比較美学
*小説の映画化:Hemingwayの場合