日本文化論

担当教員:ロバート キャンベル
講義題目:普仏戦争 ―日本人の体験と表象―

普仏戦争(独仏戦争とも、1870-71年)は、プロイセンの台頭とフランスの第三共和制誕生を用意したものとしてよく知られているが、同時にヨーロッパにおける近代的な戦争の第一号でもあった。半年に及ぶ独軍によるパリ包囲(兵糧攻め)に堪えて、一人の若い日本人陸軍士官候補生が戦争の中心地から日々悪化する市民生活、市民のいらだち、そして戦局の委細を克明に書き記していた。渡六之助『法普戦争誌略』(『巴里籠城日誌』とも)という記録がその成果である。授業では、戦争直後に東京で出版されたこの記録を、その後に続出したいわゆる通俗的な読み物、中国で刊行された別種の戦争記録などと読み合わせながら、この戦争が体験として、そして表象としてどのように成り立ち、明治初期の日本文化の中でどう位置づけられるのかを問いたいと思っている。

プリントで配る『法普戦争誌略』の原文コピーを読解しながら、戦争の背景などが分かる日本語・英語・フランス語による当時の文献と現在の研究書を参照し、解明していく。人数によっては演習形式となるが、いずれにしても受講生には積極的な参加を期待したい。