科学哲学I

担当教員:信原 幸弘
講義題目:無意識と合理性

認知科学や脳科学の発達により、人間の意思決定の仕組みが次第に明らかにされつつある。とくに人間の意思決定において、無意識的な心の働きが非常に大きな役割を果たすことが明らかになってきた。行為を行ったあとになされる行為の説明においては、行為はしかるべき信念と欲求にもとづいてなされたものとして合理的に説明されるが、それは行為にいたる意思決定のプロセスを忠実に捉えたものというよりも、たんなる合理的な再構成にすぎないことが多い。じっさいの意思決定のプロセスは無意識の心の働きが複雑に絡み合い、必ずしも合理的とはいえないようなプロセスである。意思決定における無意識の役割と合理性の問題について、英語の文献を読みながら考察する。