担当教員:宗像 和重
講義題目:近代の「原稿」研究
近代の「原稿」研究、おおよそ明治末年から比較的最近まで、言葉で何かを表現することは、ジャンルや書き手の違いを超えて、「原稿用紙」と呼ばれる四百字ないし二百字の四角い枡目を埋めることとほぼ同義であった。その前提で、センテンスやパラグラフの布置結構も形成されてきたのであって、このことは近代の言語環境や筆記環境の再検討を促すとともに、国語教育における「綴方」や「作文」の問題を考える上でも、見逃すことができないだろう。また、「原稿」として書かれたものは、印刷・校正・製本・流通などの諸段階を経て、活字の新聞や雑誌、書籍などの体裁で読者のもとに届けられるが、これらの過程における本文の変容についても目を向けたい。主に近代文学の原稿類を対象とし、複製や写真版などを用いながら、時代を追って「原稿」の諸相を検討するが、受講生にも随時報告を求める予定。