比較文学論Ⅰ(日本比較文学Ⅰ)

担当教員:本間 次彦
講義題目:「易」と中国の伝統思想

中国伝統思想の文脈において、この世界をもっとも抽象的かつ本質的なレベルで理解する際の究極のよりどころとして、「易」は重視されてきた。しかも、「易」は、本質的なレベルでの世界理解を現実的に最良の処世判断に転じるための究極の装置とも位置づけられてきた。この世界をより良く理解することと、この世界で他者とともにより良く生きることが、「易」を通じて不可分に統合される、と考えられていたのである。このような想定の下に展開された「易」解釈の歴史を概観することで、中国の伝統思想の特質にせまることを、この授業では目ざしていく。特に、長期にわたって、範例的な影響力をもった朱子の「易」解釈の紹介・分析が中心となる。