比較芸術論演習

担当教員:金沢 百枝
講義題目:中世キリスト教美術再考

この講義は、近年の研究動向をふまえて、中世のキリスト教美術についての従来の説を問い直す試みです。
とくに、ヨーロッパ社会の揺籃期とされるロマネスク期(11世紀から12世紀)に焦点をあてますが、古代ローマの再生、その受容、そして変容を、多角的な視野から眺めるつもりです。例えば紀元千年前後、宗教運動の興隆と相俟って広がった「キリスト教世界」が、古代ローマを継承・模倣し、ケルト・ゲルマンの習俗を取り入れ、イスラームやビザンティンの高い文化の影響を受けつつ発展し、「ロマネスク」という「共通様式」を産んだという説。あるいは、パノフスキーの『スコラ哲学とゴシック建築』に代表されるように、ゴシック期をその転換点とする歴史観。また、中世美術の評価は、19世紀ヨーロッパのナショナリズムの勃興と関連していたこと。こうした中世美術をめぐる緒論を再考しつつ、美術史研究における「テーマ設定」の仕方や文献操作等について学びます。