担当教員:増田 一夫
講義題目:フェミニズムから見たフランス社会
なぜフランスではフェミニズムを標榜する言説があまり見られないのか? 今学期のテーマは、かねてから持っていたこの素朴な疑問から出発している。また、2004年のいわゆる「イスラーム・スカーフ禁止法」採択の際に、大勢のフェミニストたちが法制化賛成の側から発言をくりかえした。だが、「もっとも厳しい家父長制から救い出すために、父兄に強制されたスカーフをまとう娘たちを退校処分に処す」ことを眼目とした法律。それは結局、そこから救い出すと称される家父長制が支配する家庭へと娘たちをと追いやることに帰すのではないのか? その法律が含意する奇妙な論理に対して抱かざるをえない違和感も、フランスにおけるフェミニズムを問うよう導くものであろう。
今学期の授業では、フランス・フェミニズムの多様性を確認した上で、上記の問題以外に、議員等の男女同数をめざしたパリテ法、同性または異性のカップルに結婚とほぼ同等の権利を保証するPACS、同性婚、売春などを取り上げ、そのつど噴出するフェミニストたちの議論と、そこにおける差異ひいては対立点を確認し、それらの議論を通じて浮かび上がるフランス社会の輪郭をなぞってみたい。
ただし、授業担当者はフェミニズム研究の専門家ではないので、フェミニズム諸理論に関する包括的な見取り図を提供することは考えていない。