比較研究の理論

担当教員:今橋 映子
講義題目:比較研究の理論・入門編ーー「比較」とは何か

【比較研究の理論・入門編ーー「比較」とは何か】

 本授業では、「比較文学」の学問分野で開拓されてきた理論を基礎に、比較研究(Comparative Studies)の今後の可能性を探る。
 「比較文学」の「比較」とは、「越境」という語に置き換えられる。すなわちこの学問では、「文化の越境」と「ジャンルの越境」という二つの軸を中心に研究が展開する。具体的には例えば、日本と異文化との関係を問うこと(文化の越境)も、文学と絵画との相関関係を問うこと(芸術ジャンルの越境)も、この学問の対象範囲なのである。
 今年度の授業では、そもそも「比較」とは いかなる営為なのかという問いに、具体的および理論的に答えることを目的とする。
 日本においてもすでに百年の実績をもつ比較文学という学問が、「世界と日本が出会う」あるいは「文学と他の諸芸術とが出会う」諸々の場をどのように捉えてきたのかについて考えたい。それは単に学問論ではなく、現代社会に私たちが生きることの意味を問い直すことにもなろう。
 授業では上記の問題に答えうる優れた論文、ビデオ教材、参考図書などを豊富に読むことを第一義にしたい。比較文学についての予備知識は必要としないが、大学ならではの高密度の日本語論文を、しっかり読む体験をしたい参加者向きの授業である。