比較芸術論演習

担当教員:ヘルマン ゴチェフスキ
講義題目:音楽作品とその演奏における国民性の表現

この授業は音楽の作品研究方法への多面的な導入として考えられている。(この場合の「作品」概念は作曲家の作品である「曲」のみならず、演奏者の作品である録音された演奏なども含む。この授業で扱う音楽は西洋のクラシック音楽、非西洋の伝統芸能、日本や世界の近代音楽、大衆音楽などを含む。)

音楽作品は国境を越えて受容されることが多く、その場合「国民性の表現」は作曲・演奏する側からも受容される側からも問題とされることが多い。また、それが作曲・演奏様式の分類に使われている場合も多い。「国民性が強い」とか、「国民色が強い」などの様な表現を使うこともある。そこで例えば「日本的」、「フランス的」、「ロシア的」とされるものは具体的に作品、または様式の何を指すのだろうか。それを知るためにはまず作品の比較研究、つまり他の作品との共通性と相違に焦点を当てる作品分析が必要である。それ以外に作者の証言、評論、理論書などを辿らなければならない。そして音楽という分野を超えて国民性の根拠についての考察が必要だろう。それには国民や国家の歴史も絡んで来るだろう。

この授業ではこの広いテーマを文化論か方法論から抽象的に扱うより、具体的な作品研究を中心に扱いたい。できるだけ多面的な内容や方法に渡る授業にしたいのだが、それより重要なのは学生たちがそれぞれ興味がある作品を選び、その作品で自分の問題意識や分析能力を高めることである。従ってこの授業の具体的な内容は学生の興味によって決まり、授業が始まってから教員とともに考えることになる。