比較日本文化論演習

担当教員:今橋 映子
講義題目:エクスプリカシオン・ド・テクスト(explication de texte) 再考ーーテクスト評釈の精緻化と人文研究の存立

本授業は「エクスプリカシオン・ド・テクスト」(作品評釈)についての徹底的な考察を行う。この方法は、150年近い歴史をもつ比較文学研究の中心的な学問方法として精緻化されてきた。これは現在、文学テクスト以外の芸術作品にも適用され豊かな学術成果を生み出している。作品評釈から始まる比較研究(Comparative Studies)は人文研究に何をもたらしているのか、隣接学問の方法との差異に改めて意識を払うことによって、今日における可能性や問題点等を見極めたい。

◆Sセメスター◆
 「エクスプリカシオン・ド・テクスト」の実践とその可能性の探究

1)比較文学で長くdisciplineとして認識され、継承されてきた「作品評釈」(explication de texte)とは何かを学び直す。フランスの教育法で開発されてきた方法、それを応用精緻化させた比較文学研究での理論を整理し、自分自身の方法として鍛え直す。【講義および参加者発表】
2)試みに、日本近代文学の小品を一つ取り上げ、それを個々で評釈して互いに講評し、上記の理論に逆照射して検討する。【小レポート】
3)美術史研究において基礎とされる「作品記述」(description)の方法を学び直し、上記2)と同様に、20世紀写真作品を取り上げて全員で評釈し、互いに検討する。【小レポート】
4)作品評釈を主体とするがゆえに傑出した成果を上げた比較文学比較芸術研究の論文を取り上げ、論文分析をする。【参加者発表】
4)作品に密着する比較研究(Comparative Studies)は、人文研究として畢竟どこを目指そうとしているのか、統計調査や分析理論から出発する他の学問との差異や可能性、限界などについて全員で討議する。【討議】

本授業で「作品」とは、文学、絵画、写真、彫刻、映像、舞踊、建築など広く捉えるため、幅広い専門分野からの参加者を歓迎する。音楽は作品対象から外す予定。ただし(Sセメスターの)共通課題としては文学と写真を使用するため、それに積極的に参加することが条件となる。