比較芸術論演習

担当教員:ヘルマン ゴチェフスキ
講義題目:音楽批評を批判的に読む

音楽批評(作品批評、演奏会批評、録音批評等)は観点によって音楽史の「一次資料」としても「二次資料」としても扱われるが、いずれにしても批評家という主体が特定の読者に向けて書いたものであり、雑誌や新聞の規定や方針によって制限される場合も多い。「音楽批評の書き方が歴史的にどのように変わったか」(つまり音楽批評そのものを音楽文化の要素と観察する問題意識)、「ある音楽がどのように批評されたか」(つまり受容史を中心とする問題意識)、または音楽批評を文学ジャンルとして観察する視点などは音楽批評を一次資料と見なす場合である。それに対して音楽批評を主に音楽や音楽文化についての情報源として扱う場合は音楽批評が二次資料になる。それを批判的に読むということは、文の意図、それによって成立する著者と読者のコミュニケーションなどを十分理解した上にその内容や形式を評価することである。授業では主に19世紀から現在までの音楽批評を対象とし、言語や音楽ジャンルには特に制限を設けないが、できるかぎり広い範囲の音楽批評を読んでみたい。