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 ゾイゼ(1295頃~1366)は『知恵の時計』(Horologium Sapientiae)という著書に、いかにして正しい信仰の道を見い出したかを書き記した。それは中世でもっともよく読まれた宗教書の一つであり、挿絵付きの写本が数多く存在している。
 序文にはタイトルの解説と思われる次の文章がある:

神の知恵は、灯の消えた者に再び灯を点し、冷たい者を燃え上がらせ、生ぬるい者を動かし、信仰薄き者に信仰を呼び覚まし、無関心の惰眠をむさぼる者を道徳に目覚めさせようと目論んでいる。救世主の慈悲深さが、ある幻の中で、私に、この上なく美しい薔薇の花で飾られ、万人の心を高めずにいないこの世ならぬ甘美な音を奏でる数多の鐘を備えた秀麗な時計の姿のこの小さな書物をお授けになったのはそのためだ。

 15世紀半ばに出たこの書物のフランス語訳の写本では、上の引用文にすばらしい挿絵が付けられている(google books)。サピエンティア(旧約聖書の外典である『知恵の書』の語り手である「知恵」)が著者の案内者として登場している。時計とカリヨンのほかに、様々な天文学の器具が描かれているのが興味深い。中世の他の写本にもこのテキストに様々な挿絵が添えられている。[1]


[1] Frank Deleu: "Het ontstaan van de beiaard", in: Gilbert Huybens, ed.: Beiaarden en Torens in België, Gent: Ludion, 1994, 15-24: 20-21参照

H. G.
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