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自動演奏楽器は単に既成の音楽を自動演奏する装置とみなされていたわけではない。作曲家たちは、従来の楽器ではできなかったような音楽を現実のものにする、新しい楽器としての可能性をそこにみようとした。パウル・ヒンデミット(1895-1963)もその一人である。彼はウェルテ社と協力し、ウェルテ・ミニョンというリプロデューシング・ピアノのロールに自分自身が手で穿孔作業をするという形で「作曲」を行った。それらの作品は1926年の「ドナウエッシンゲン室内音楽演奏会*」シリーズの最終日の「機械ピアノ(ウェルテ・ミニョン)のためのオリジナル作品の演奏会**」で、他の二人の作曲家の作品とともに演奏された。それらの作品は,人間の手では出せない厚い響きに満たされているが、それ以上に、演奏者という人間の介入を排し、機械ならではの冷たく明晰な音楽を実現させることによって、新たな音楽表現の世界を切り開こうとする彼らの志向をよく示している。

渡辺裕
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