山本純之介

『ピアノのための絶対音楽2番』の初演は2007年1月7日,オペラシティ・リサイタルホールで、電子制御による自動ピアノと映像で初演された。作曲際し、コンピュータで音を出し自らの耳でその都度確認し進めた。
 ピアノで作曲する事が多いがそこには『情感』が込められてしまう。機械は当然『自分や他人』による『情感』が排斥されるので即物的で、良い意味で客観的に自作を見つめる事が出来た。『人』による演奏を想定したのだが、細かく設定したデジタルデータを多面的に活用することに興味が移った。もともと、和声学や,旋律学,12音技法,などからの発想の延長ではなく、『聴覚』と『視覚』による重層的な『時間芸術』をコンセプトとした。土佐さんには作曲データをもとに、演奏者のごとく映像を自由に演奏(データ化)?して頂いた。『音楽と映像の異なる時間軸,時間価値のポリフォニック』である。映像はカタカナ,漢字がオノマトペ的に変容し、同時演奏されるピアノの鍵盤が重層投射される.機械が弾く鍵盤を観客は奏者のように俯瞰する。奏者は居ないがプログラムされた,複数奏者を映像で意識出来る.絶対的な創作価値による『音楽』と『抽象的視覚化』された『言葉』の映像が機械の制御で同一の時間帯に,具現される。つまり初演の音楽を『聴く』と同時に視覚化された音楽を『見る』。
 作曲を『音像化』の発想から『視聴覚化』に拡充する.同時に聴衆は演奏者を視覚疑似体験する. 
 西洋音楽の単一時間軸の『音楽』から発展した,二重時間軸を持った『音楽』としての発想による新たなる『貌』。記譜は,定量記譜で書かれているが,数字でも,グラフにでも置換は可能。

山本純之介「私の音楽観と語法について」



絶対音楽のための絶対イメージ "Absolute Image for Absolute Music"

土佐尚子

この作品は絶対音楽の可視化をねらったものである。絶対音楽とは、音楽そのものを表現しようとしている。そのために、情景・感情など、人間に取って意味のある情緒などの意味を排除しており、音の組み合わせそのものに意味を見いだそうとしている。そのような音楽を可視化する時、通常の情景やCG表現を用いるとどうしても情景・感情などの意味と結びつきやすくなる欠点を持っている。そこで、意味を排した表音文字の組み合わせを音楽に対応させることにより、絶対音楽可視化を試みた。
日本語には3つの異なった種類の文字である「かな」、「カタカナ」、「漢字」があり、それぞれ異なった複雑さを持っている。
時間と共に音楽と文字の対応関係が、かな、カタカナ、漢字およびそれらの組み合わせになるようにして、音楽の時間経過表現を可能とした。さらに、意味の出現を排除するため、文字の系列が単語になることを排する機能が組み込まれている。

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