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古代のもっとも有名な「音楽機械」は水オルガン(ヒュドラウリス、オルガノン・ヒュドラウリコン)だろう。紀元前3世紀にクテスィビオスが発明し、その著書『空圧について』で記述したと言われるが、これは残っていない。現在残っている一番古い説明はヴィトルヴィウス著『建築について』(紀元前30年頃)とアレクサンドリアのヘロン著『空圧』(紀元後1世紀?)に見られるものだ。ヘロンの著書には挿絵もついている(ヘロンのページ図3〜5参照)。
このオルガンでは空圧が水によって調節されていたので、『水オルガン』という名前が付いている。 パイプ自体は水ではなく、空気で鳴っていた。
 この水オルガンは巨大な音を出す楽器であり、またパイプが演奏者によってでなく、「異質な力」によって鳴らされる「不思議な楽器」であったため、公的な場で抜きん出た効果を発揮した。アルキメデスのプラネタリウムと並んで、最高の技術と知識を象徴し、ローマ帝国の権勢を広く蛮人に告知するものであるがゆえに、「武器より効果的に」帝国を守護する力があったと主張する資料さえある【1】(テオドリック王がボエーティウス宛に書いた手紙、紀元後507 年)。

【1】Reinhold Hammerstein, Macht und Klang, Bern: Francke Verlag, 1986, S. 27-28.

H. G.

 

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