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  中世の代表的な自動楽器は時計に付属する鐘である。時を打つだけのものから複雑な曲を奏 でるものまで多くの種類があり、「時計」と「自動楽器」の間に境界線を引くのは難しい。当時の最高の知識や技術を駆使して完成された宇宙時計は太陽の軌道だけでなく、月や惑星や星座の軌道をも示していた。時計はこのように宇宙の調和的な運行を表現するものでもあったが、この調和的運行に一致してこそ初めて正しい政治が可能になると考えられていた。だから宇宙時計を所有することは天の動きを知ることを意味し、それはまた地上に力を及ぼすことになると考えられていた。音楽も宇宙の秩序を反映するものであった。時間を告げるために美しいメロディーが使われたのはけだし当然であった。
 この基本的な考え方は西洋文明のみでなく、東洋にも見られる。右に掲げたのは十一世紀中国の天文観測時計塔「水運儀象台」(長野県諏訪郡下諏訪町に復元されたもの)の写真だが、当時東洋が学問的にも技術的にも西洋より遥かに進んでいたことを証明するものである。しかしキケロによるアルキメデスのプラネタリウムの説明を読めば、西洋の古代にもそれに匹敵する宇宙時計のような複雑な装置があったと考えられる。
水運儀象台にはメロディーを鳴らす装置はないが、時間の告知には様々な楽器が使われている。

H. G.

 

   Photo: ORIMO Katsuya

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