本コースの沿革
現代思想コースの理念と特色
本コースの履修について
卒論論文テーマの例
卒業後の進路(就職・進学)について
本コースへの進学を考えている皆さんへ
本コースの沿革
本コースは2011年度に設置され、2012年度より内定生を迎える新しいコースです。
これまで「比較日本文化論分科」と「表象文化論分科」に分かれていた哲学・思想関係の担当教員が、それぞれに鍛え上げてきた自らの力と、新たな共通の理念のもとで哲学教育を行うべく、一つのコースに集まり、協力体制を作ることになりました。
(旧「比較日本文化論」と「表象文化論」ついてはこちらを→旧シニアコース「比較日本文化論分科」と「表象文化論分科」のHP。
(担当教員についてはこちらを)
現代思想コースの理念と特色
複雑化し多くの難問に直面する現代社会では、物事を根源的かつ総合的に思考して行動する哲学的知性(philosophical mind)が求められています。本コースでは、そうした時代の要請に応えるために、狭義の「哲学」に特化した専門性の追求にとどまることなく、現代思想と現代哲学の膨大な知的資源を主な素材としながら、世界の多様な現実との対話を通して、「開放系」としての哲学・思想を探求します。西洋・東洋の分断を超えた哲学・思想の遺産と、人文・社会諸科学の成果を正確に踏まえながら、知識と行為、言語とコミュニケーション、国家と歴史、倫理と宗教など、現代の生と社会の諸現象を、人間存在の根本から思索することをめざしています。
本コースのカリキュラムでは、基本科目として「現代思想」や「現代哲学」、「文化社会論」や「倫理宗教論」の講義・演習などを開講するほか、特殊研究・特殊演習の各科目で、現代社会のアクチュアルな諸問題に積極的にアプローチします。たとえば、「倫理」の領域では、基礎倫理、応用倫理の既存の問題群はもとより、「モダニティとジェンダーの倫理」、「グローバル化と共生の倫理」といった先端的テーマが取り上げられます。また欧米圏の哲学・思想と同時に、日本・中国の思想が専門的に学べることも、本コースの特色です。
本コースでは、現代社会の諸問題と広くかつ深く関わっていくための哲学的知性の養成を理念とします。したがってそれは、たんに現代の思想や哲学の深い学識の習得にとどまりません。明確な問題意識をもって現実世界へ関与(public commitment)する資質を育て、そうした実践的問題に理論的に取り組むための論理的・批判的思考(critical thinking)を鍛え上げることでもあるのです。
本コースの履修について
本コースでは、学生が自らの関心をもつことを重視します。そこから出発して自分に合った履修計画を立てていくのです。一つの方向へ向けてまっすぐ進んでもいいですし、あちこち探索してもかまいません。しかし他方で、確かな語学力を習得し、自ら原テキストと格闘しうる読解力を身につけること、演習を通して緻密な思考力を養うこと――それらはしばしば地道で大変な作業ですが、すべての基礎となります。
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卒業論文にさいしては、テキストの講読、論理の組み立てなど、思想研究の基礎を学んだ上で、特定の思想に集中して取り組むことでもできますし、何かのテーマ・問題を中心にいろんな思想をめぐることもできます。一見思想や哲学とは無縁に見える事象を哲学的な視点から考察することもできます。専門的な思想・哲学研究を基礎にしつつも、狭い意味での哲学にとらわれず、新たな領域、新たなテーマへと超え出ていくこと、そのために教員と学生が互いに思考を鍛え上げていくこと、それが本コースの特徴です。
卒業論文テーマの例
- 分析哲学の諸問題、現象学の諸問題
- ウィトゲンシュタイン研究、ハイデガー研究、ニーチェ研究
- 言語論、他者論、身体論、宗教論
- ベンヤミン『暴力批判論』の研究、デリダ『法の力』を読む
- 犠牲の論理とジェンダーの問題
- コスモポリタニズムとナショナリズム
- 近現代ドイツ思想(歴史、芸術、文化との関係も含めて)
- 現代ドイツの政治文化と思想
- 規範性と儀礼、近代化と伝統
- 日本近代思想における中国の表象
- 江戸時代の医療から見た生命観 など
卒業後の進路(就職・進学)について
「コースの理念と特色」で述べた哲学的知性(philosophical mind)、現実世界への関与(public commitment)、論理的・批判的思考(critical thinking)は、今日多くの分野でますます必要とされている能力です。本コースを主専攻とする卒業生には、国家・地方公務員、国際機関、出版・報道・メディアをはじめ多様な分野にまたがる企業など、各方面に広く進路が開かれていますし、新たに開いていくことを期待します。
また、さらに研究を深めたい人には、大学院(哲学系はもとより人文・社会科学全般、本学総合文化研究科の文系諸専攻、ロー・スクール等)への進学も可能です。とくに、大学院総合文化研究科・超域文化科学専攻のうち、本コースの担当教員が所属する比較文学比較文化研究室と表象文化論研究室には直接つながっており、引き続き本コースの教員の指導を受けながら、より高度な研究へと発展させていくことができます。 詳細は以下のサイトを参照してください。
比較文学比較文化研究室→http://fusehime.c.u-tokyo.ac.jp/index.html
表象文化論研究室→http://repre.c.u-tokyo.ac.jp/
本コースへの進学を考えている皆さんへ
私たちのコースの教員は、かなり趣を異にする専門領域とテーマをもっています。それぞれが自分の道を進みながら、ゆるやかに協同し、互いを刺激し合い、自らの思索の糧にしています。本コースを希望する人には、研究の方向性やテーマとして、これがいい、こうでなければならない、といったような特定のことが求められているわけではありません。
コースの名称は「現代思想」ですが、研究領域は20世紀の思想やいわゆる現代哲学に限られません。近代やそれ以前の思想であってもかまいません。また、欧米だけではなく、中国や日本の思想も重視しています。大事なことは、どんな思想に取り組むにせよ、現代的なコンテクストや今日のアクチュアルな問題とのつながりを意識すること、そのなかで自らの思索を深め、広げていくということ、そしてそれを通じて自らの関心に具体的な形を与えることなのです。