東京大学比較文学比較文化研究室

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研究室紹介担当教員紹介大学院学部後期課程
徳盛 誠 とくもりまこと
専門

課題は、古代の漢字テキストである『古事記』『日本書紀』理解の問い直しであり、その観点からの本居宣長『古事記伝』批判である。宣長の生きた十八世紀日本の思想を比較文学比較文化の観点から問い直すことにも関心がある。

 
シニアで主に担当する予定の授業科目名
比較日本文化論演習、テクスト精読法
 
旧シニアで主に行っていた授業内容名
日本文化基礎論演習
 
この新しいコースと学生さんたちに期待すること

夏目漱石『三四郎』の冒頭近く、大学入学のため上京する三四郎は、列車内で謎めいた人物と言葉を交わす。日露戦争後の日本を擁護しその発展への期待を口にする三四郎に、その男は「囚われちや駄目だ」と言い放つ。

私は現在、文献調査の基本を実習する授業をしているが、以前、私自身がこの授業で学び、これからも授業を通じて伝えたいことはこの言に少し似ている。すなわち、調べる際、「眼前の現状に囚われるな」ということだ。たとえば、身近な図書館の現状、そこで見られる書物に調査を限定されては駄目だ。何を調べるべきかという観点から、時にはその図書館では足りないと判断し、別な場を探すようでなければならない。現状でできる調査ではなく、あくまで必要十分な調査を追求すること。

これだと調査だけの問題に聞こえるかもしれないが、たとえば、実に面白そうなフランスの文人に出会った時、フランス語未履修だから避けよう、ではなく、その時からフランス語学習を開始するのも同様の態度だと思う。こうありたいというところから現状を変える努力をする。そこで求められるのは、勤勉にとどまらない強引さ、もっといえば野蛮さかもしれない。

そして、ここでいう現状とは、自分の学力や身近な図書館の蔵書にかぎらず、対象についての「普通」の見方、現行の学部学科の枠組み、対象分野の既存研究の状況等々、時には三四郎の場合のようにこの国のイメージさえ含みうるだろう。これら「現状」の中には簡単に変えられないものもある。だが、自分の中に、こうありたいという望みと現状との対立を創り出し、それを乗り越える努力をするのが重要だと考える。「囚われちや駄目だ」と言われた時、三四郎は真に郷里を出たような心持ちがしたのだった。それをショックとして消化してしまわず、着実に、時に強引に具体化していくことを追求したい。

 

 

 
 

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