安益泰(アン・エキタイ 1906~1965)は韓国国歌の作曲者として名を知られていますが、第二次世界大戦中に、ヨーロッパで音楽家として国際的な地位を築きました。一方で同時代の著名なユダヤ人音楽家達は、ドイツやヨーロッパから世界各地に亡命し、上海・東京・ハルビンまでも来ていました。
日本の迫害にもかかわらず安益泰が韓国の愛国者としてその主要作品『韓国幻想曲』をヨーロッパに広めようと努めたと、久しく語られてきました。しかし、その裏付けとなる資料はほとんどありませんでした。最近ベルリンとコブレンツのドイツ連邦公文書館で講演者・李京粉が行った研究によって、今まで知られていなかった安益泰の第三帝国での活動が明らかになり、かれの愛国的な活躍が実は戦後の作り話だったことがあきらかにされました。
【講演者紹介】
李京粉(イ・キョンブン)、ドイツのマールブルク大学でドイツ文学(修士)と音楽学(博士)を修めた。ソウル大学講師、翻訳家、音楽評論家。第三帝国の音楽政策、独裁・亡命と音楽、ハンス・アイスラー、ベルトルト・ブレヒト、安益泰などについて多数の著書がある(ドイツ語・韓国語)。