比較日本文化論分科では、学内外からの協力を得て、学部1・2年生向けに「テーマ講義」という連続講座を、毎年度夏学期に開講しています。
担当教員:井上 健
担当教員:Hermann Gottschewski
担当教員:甚野 尚志
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担当教員:齋藤 希史
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担当教員:ロバート キャンベル
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平成14年度「表現の中の異国」
担当教員:大澤 吉博
今日、異国情緒は「愚かしい」ことと考えられているように見えます。確かにこれだけ世界が小さくなると、独立した世界などというものは想定できなくなります。どの社会も多かれ少なかれ外の社会と結び付いていますし、どの社会にも外国人がいて当り前になっています。
しかし、19世紀半ばまで、日本は「鎖国」をしていたのであり、外国人がいて当り前という状況にはなかったのです。外国はあまりにも遠く、それは「想像の世界」ともなっていました。それは日本だけのことでもありませんでした。外国を自国とはかけ離れたものと考えること、それは外国の実像を歪めていたと同時に、憧れの対象ともしてきたのです。
そうした異国趣味を国際化が進んだ今日において再吟味してみるのが、このテーマ講義の趣旨です。対象は音楽、絵画、文学、映画、写真と多岐にわたるでしょう。
スケジュール
- 4月10日
- 大澤吉博「イントロダクション」
- 4月17日
- 義江彰夫「G.マーラーと漢詩の世界──「大地の歌」を通して」
- 4月24日
- 長木誠司「チョーチョーさんが住む日本」
- 5月 1日
- 今橋映子「写真の中のパリ──日本人写真家の場合」
- 5月 8日
- 三浦 篤「西洋絵画におけるオリエンタリズム」
- 5月15日
- 斎藤兆史「キプリングの異国──『キム』を中心に」
- 5月22日
- 工藤庸子「地中海文明とサロメ」
- 5月29日
- 杉田英明「砂漢と駱駝──日本人の中東観」
- 6月 5日
- 菅原克也「日本近代詩と南方幻想」
- 6月12日
- 三角洋一「浜松中納言物語をめぐって」
- 6月19日
- 大澤吉博「まとめ」
- 6月26日
- 予備日
- 7月 3日
- 試験、あるいはレポート提出について
平成13年度「語りえぬもののために ──宗教・芸術・哲学」
担当教員:岡部 雄三
人間は、人間として生き始めたときから、自らにこの現実が与えられたことの驚きを、多様な表現にもたらしてきた。罪なき人を打ちひしぐ残酷さと不条理に説明の言葉を失いながらも、隠れた神に祈りの言葉を捧げ、常識の言葉の尽きた場所から、語りえぬもののために詩と音と像とを創出し、概念的思考の届かぬ現実の根拠へと向けて、思考それ自体を先鋭化させていった。
宗教、芸術、哲学が人間に対して持つ意味を、「語りえぬもの」についての表現という観点から考えてみよう。古代から現代、ヨーロッパからイスラム、日本までの広い領域をカバーする専門家たちによる、包括的な入門講義である。
スケジュール
- 4月11日
- 「無」を語る花(宮本久雄)
- 4月18日
- 金子光晴「うれひの花」のありか ──詩と絵のために(今橋映子)
- 4月25日
- 物語論をめぐって(高橋哲哉)
- 5月 9日
- 芸術という名の宗教 ──ゴッホを中心に(三浦篤)
- 5月16日
- 『論理哲学論考』を越えて(野矢茂樹)
- 5月23日
- 萩原朔太郎 ──ずれてゆく形と意味の逸脱(エリス俊子)
- 5月30日
- 世界の閃き ──ハイデガーの思考(門脇俊介)
- 6月 6日
- 女性と幻視 ──中世異端への視角(甚野尚志)
- 6月13日
- 空海における「源」ということ(竹内信夫)
- 6月20日
- 「沈黙の声」に耳を澄ます ──イスラム神秘主義の世界(杉田英明)
- 6月27日
- 超越の響き ──モーツァルト(佐藤真・日本赤十字看護大学)
- 7月 4日
- 表現者としての神、人、自然(岡部雄三)
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平成12年度「視覚芸術と〈思考〉」
担当教員:今橋 映子
古来、美術は人間の美的感受性や内的感情の直接の「あらわれ」というだけでなく、哲学的、思想的、美学的あるいは宗教的「思考」と深く結びついてきた。
今回のシリーズでは西洋および日本の事例を広く取り上げ、視覚芸術(絵画、映画、写真、マンガ)や舞踏、庭園などと〈思考〉との関係を論じ、比較芸術論入門へのよすがとしたい。
芸術を見ること、語ること、考えることが好きな受講生、あるいはこれを機会に様々なジャンルの芸術に触れたいという受講生を歓迎する。
スケジュール
- ガイダンス(今橋映子)
- 「動物寓話集」の動物図像と中世人の思考(甚野尚志)
- 絵画以前 ──江戸の絵に「思想」はあるのか(ロバート・キャンベル)
- 能「定家」の世界 ──中世的思考の深みへ(松岡心平)
- 舞踏と身体(尼ケ崎彬)
- 庭園論(持田季未子・大妻女子大学)
- マネの《草上の昼食》をめぐる思考(三浦篤)
- パリ写真の思考 ──現実と神話のあいだ(今橋映子)
- 映像と思考 ──プラトンから認知言語学まで(門脇俊介)
- 主体のすがた ──シェンダー化する哲学(北川東子)
- 戦争の記憶 ──『ゆきゆきて神軍』が問うもの1(高橋哲哉)
- 戦争の記憶 ──『ゆきゆきて神軍』が問うもの2(高橋哲哉)
- マンガ/芸術論(ジュクリーヌ・ベルント・立命館大学)
平成10年度「日本における〈古典〉の成立」
担当教員:神野志 隆光
読むべきものとされてきた〈古典〉──読まれなくとも名前だけは知っているような存在──は、どのようにして成り立ったのか。日本から欧米まで、個別のテキストを取り上げながら、近代が制度化した〈古典〉について考えたい。
スケジュール
- プレゼンテーション 〈古典〉という制度を問う。
- 『万葉集』(1)(品田悦一・聖心女子大学)
- 『万葉集』(2)(同上)
- 『古事記』(神野志隆光)
- 『源氏物語』・『枕草子』(藤井貞和)
- 芭蕉(川本皓嗣)
- 『法華経』・『浄土三部経』(三角洋一)
- 『論語』(黒住眞)
- 『こころ』(小森陽一)
- 児童文学の「名作」──『小公子』『小公女』『家なき子』(佐藤宗子・千葉大学)
- 『白鯨』(滝田佳子)
- 『悪の華』(竹内信夫)