担当教員:Hermann Gottschewski
Perspectivaという語は中世のラテン語文献に初めて登場して以来、最初は「視学(光学)」という意味で使われたが、ルネサンスからは「遠近法」という新しい技法を意味することになった。
遠近法では特定の立場から、世界にある立体的な物が精確にどの様に見えてくるか、またそれをどの様に平面に描くかということが問題になる。
後の時代になってperspectivaというラテン語とそこから由来する諸言語の単語(仏英 perspective、独 Perspektiveなど)はより広い意味で人間が世界を見る「観点」、またその観点から見えた世界、さらに物を重視したり軽視したりすること、観点の多様性、新しく見えてくる可能性など、多くの意味を持つようになった。
見ることは識ることでもある。適切な視点を見つけることによって初めて見えてくるものがあり、観点を変えると違って見えてくるものもある。それゆえ多くの見方を知ることと自分の観点の限界を認識することは、学問にとっても芸術にとっても最も根本的なことの一つなのである。
そのように考えて、比較日本文化論主催のこのテーマ講義ではperspectivaという事象自体をとりあげ「様々な観点から観る」対象とした。
この講義が聴講者自身の立場とその可能性をはっきりさせるプロセスの助けになることを期待する。