比較文学比較文化研究室

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研究室紹介担当教員紹介大学院学部後期課程

授業内容一覧

平成31/令和元/2019年度

科目名(担当教員) 講義題目・内容
多元文化構造論II
(大石紀一郎)
[Sセメスター・Aセメスター]モダニティと哲学/哲学のモダニティ
18世紀後半以降のドイツ語圏において、「モダニティ」のさまざまな事象がどのように経験され、また、哲学者たちがその経験とそれがもたらす問題に対してどのような思考的応答を企てたのかを考察する。
「モダニティ」の諸事象とそれに関する概念について整理したのち、カントに始まり、ヘーゲル、マルクスなどの弁証法的歴史哲学、ニーチェやアドルノにおける美的モダニティ論を経て、現代のハーバーマスにおける社会的モダニティ論に至るまでの、哲学的モダニティの言説を概説する。
日本語でこの問題を論ずる際の問題を翻訳も含めて考察しながら、ドイツ語の用語については訳や背景を解説する。参加者との討論にも十分に配慮して進めたい。
多元文化協力論II
(谷口洋)
[Sセメスター・Aセメスター]近代日本知識人の漢文を読む
漢文(古典中国語)は、中国はもとより、日本や朝鮮など東アジアにおいて、一貫して主導的な書き言葉であった。東アジアについて考える際、多少とも歴史的要因に目を向けるなら、漢文とのつきあいを避けて通れない。
漢文は、単なる言語・文体であっただけではなく、それによって書かれた大量の書物によって形成された、独特の思考の型をまとっており、その影響はいまも完全に消え去ったわけではない。ここでは、漢文という文体にまとわりつく思考の型を、読解という行為を通じて体感的に学ぶ。またそれとともに、東アジアについて歴史的視点から(歴史学に限らない)研究する際に必要な漢文資料の解釈能力を錬成する。
受講生による漢文資料の輪読を行う。前年度は、明治から大正にかけて漢学者・新聞記者として活躍した西村天囚(1865-1924)の漢文を取りあげた。今年度もこれを継続する予定だが、受講生の専攻領域や興味関心によっては、別のものにする可能性もある。 第1回の授業で、受講希望者と綿密な打ち合わせを行い、資料選定と授業方針の策定を行う。第2回以降の数回は、資料蒐集と必要最低限の解説にあて、それが終了してから受講生による輪読に入る。
秋セメスターからの新たな履修者も歓迎する。
神話と文化II
(梶谷真司)
[Sセメスター・Aセメスター]規範に関する歴史哲学的研究
「規範」について、哲学、社会学、歴史学など、多面的に考察する。
比較モダニティ論I
(斉藤渉)
[Sセメスター・Aセメスター]カント『純粋理性批判』を読む
(=欧州研究「欧州公共秩序思想」)
I. カント(1724-1804)の『純粋理性批判』(第1版 1781、第2版 1787)は、彼の主著であるだけでなく、近代西洋哲学の最も重要な古典の一つです。人間の理性が理性自身の限界を問うという「批判哲学」の企ては、初版刊行後200年以上たった今日でも、哲学的思考を喚起するものとなっています。
『純粋理性批判』はきわめて大部かつ難解な著作です。2019年度Sセメスターから4セメスター(2年間)かけて読み切ることを目標としています。
まず、Sセメスターでは、超越論的分析論の第一編「概念の分析論」(上巻 217頁)まで読む予定です。Aセメスターでは、超越論的分析論の第二編「原則の分析論」(上巻 218頁)から再開し、超越論的弁証論の第一編「純粋理性の概念について」(下巻 39頁)まで読む予定です。
哲学史的背景について必要に応じて触れながらも、テクストにもとづいたディスカッションを中心に授業を進めます。
毎回範囲を決めてテクストを読み、発表者(受講者数によっては複数名で担当)が用意したレジュメにもとづいてディスカッションをおこなう形式です。テクストには石川文康訳を使用します。翻訳は何種類もあるので気をつけてください(教科書の欄を参照)。なお、授業では翻訳を使用するので、ドイツ語が読める必要はありません。
基層文化形成論II
(桜井英治)
[Sセメスター]戦国時代の社会と文化
(=文化人類学「文明過程論」)
戦国から織豊期にかけて薩摩の大名島津家に奏者・家老として仕えた上井覚兼(うわい・さとかね)の日記『上井覚兼日記』を読む。当主島津義久の日々の政務にかかわる記事を中心に、武士の生活や文芸、価値観、さらには北九州以北にはみられない、南九州特有の社会構造をうかがわせる記事なども多数見られる。使用されている漢文も、多数の九州方言を含む独特なもので、けっして平易とはいえないが、言語学的にもきわめて興味深い素材といえよう。この史料から何をつかむかはひとえに銘々の関心次第だが、歴史学・文学・言語学・社会学・文化人類学・民俗学など、さまざまな分野からの受講者を広く期待している。今年度は天正3年(1575)正月23日条からはじめる予定である(ただしテキストに関しては受講者との相談により変更することもありうる)。
文化コンプレクシティ演習I
(前島志保)
[Sセメスター・Aセメスター]明治・大正期の新聞・雑誌を概観するIX(明治期の画報誌I)
新聞・雑誌といった定期刊行物はこれまでは様々な研究の資料として扱われることが多かった。そのメディアとしての在り方自体が注目されるようになったのはごく近年のことである。また、新聞・雑誌自体が研究対象となる場合も、両者の境界を越えて考察されることは稀であった。本講では、明治・大正期の主な定期刊行物のいくつかを取り上げ、刊行頻度、大きさ、紙質、レイアウト、編集傾向、文体、記事ジャンル、視覚表象の用いられ方、取り上げられる話題の傾向などに着目して調査・分析することを通して、言説を盛る器・コミュニケ―ションの媒介項としての新聞・雑誌がどのように変遷してきたのかを具体的にたどっていく。今年度は明治期の画報誌を取り上げる予定。
文化コンプレクシティ演習II
(佐藤光)
[Sセメスター]ヴァージニア・ウルフの短篇小説精読
ウルフの短篇を読みながら、小説の構造と構造という概念そのものと表現形態について理解を深めます。
受講希望者は第1回授業に出席してください。担当者の割り当て、予定の調整等を行います。

[Aセメスター]日本近代文学における自由詩の系譜を考える
日本近代文学における自由詩を精読します。定型詩と自由詩は何が違うのか、自由詩と散文は何が違うのか、詩とは何か、などを考えながら、日本近代詩に対する理解を深めます。
受講生の希望に合わせて、授業で扱う詩人と詩作品を調整します。受講希望者は第1回の授業に必ず参加して下さい。
文化コンプレクシティ演習III
(渡辺美季)
[Aセメスター]
(=地域文化研究「アジア太平洋地域文化演習IV」)
開講時に指示する。
文化コンプレクシティ演習IV
(徳盛誠)
[Sセメスター・Aセメスター]『古事記』を読む――歌を中心に
『古事記』を、物語を構成する歌にとくに注目して、読む。先人の注釈を参照しながら、この叙述が創り出しているものの理解を目ざす。本居宣長『古事記伝』など先人の研究から、具体的な読み方のみならず、研究の仕方をもあわせて学ぶことをもう一つの目標とする。
文化コンプレクシティ演習V
(永井久美子)
[Sセメスター・Aセメスター]絵巻物を読む
中央公論社刊『日本絵巻大成』シリーズ(正・続・続々)所収の絵巻物を、適宜読み進めてゆく。2019年度Sセメスターは、前年度からの続きとして、絵巻大成第1巻所収の国宝「源氏物語絵巻」のうち、鈴虫(二)以降の各段を取り上げる予定である。作品の途中からとはなるが、今年度からの受講をもちろん歓迎する。「源氏物語絵巻」の次に読む作品は、現時点では「寝覚物語絵巻」を検討しているが、受講者と相談のうえ確定する。
文化コンプレクシティ演習VI
(田村隆)
[Sセメスター・Aセメスター]『若草源氏物語』を読む
『若草物語』も『源氏物語』も有名だが、『若草源氏物語』を知る人は少ないのではなかろうか。
『若草源氏物語』は梅翁著、奥村政信画による浮世草子で、宝永4年に6巻6冊で刊行された。本学教養学部国文・漢文学部会にも『国書総目録』未収の一本がある。『国書総目録』に「改題本に「紅白源氏物語」あり」とあるのは誤りで、『紅白源氏物語』(『帝国文庫』等所収)は『若草源氏物語』の続篇と見るべきである。このように、本作品はいまだ基礎的な把握すらも十分になされておらず、授業での講読を通じて理解を深めたい。
比較詩学II
(齋藤希史)
[Sセメスター]東アジア文学史論
(=人文社会系研究科「東アジア文学史論」)
漢字圏全体を見わたす文学史的展望のもとに、先秦から唐宋まで、士大夫階層を中核とする古典詩文がどのように成立し展開したのか、その特質を把握する。

[Aセメスター]東アジア人文学の諸問題
(=人文社会系研究科「東アジア人文学の諸問題」)
東アジアの人文学にかかわる諸問題について、参加者の問題意識を共有し、討議によって理解を深める。とりわけ、漢字圏における言語や文学、書記や表象にかかわる問題を取り扱う。
ジャンル交渉論II
(ゴチェフスキ,ヘルマン)
[Sセメスター・Aセメスター]音楽史の「19世紀」
西洋音楽史において、フランス革命から第一次世界大戦までの期間を「長い19世紀」と呼ぶ場合がある。クラシック音楽界で「ロマン派」と呼ばれる時代も主にこの長い19世紀と一致するが、その呼び名は音楽学者によって批判され、学問の世界では(時代の名称として)避けられることも多い。この授業ではまずこの時代の西洋音楽史を概観し、それをどういう意味で音楽史の区分として捉えることができるか、音楽史全体を扱った代表的な音楽学者(ダールハウス、タラスキン等)の説を参考にしながら論じるところから入りたいと思う。さらに「19世紀」は日本や他の非西洋文化圏においても音楽史の区分になるかどうか論じる。
さらに20世紀以後の音楽史においては「19世紀」あるいは「ロマン派」が、同時代の音楽と区別するための(あるいは場合によって「古楽」と区別するための)対照としてどのような役割を果たしてきたか論じたい。
この授業で扱う音楽史は作曲家と作品が対象とする狭義の西洋音楽史だけではなく、演奏、家庭音楽、音楽教育、音楽業界などを含む広義の音楽史である。
このテーマを通年に扱うが、夏・冬のみの履修も可能である。
比較形象論II
(三浦篤)
[Sセメスター]印象派の芸術家像
現在、世界的な名声を確立している印象派はあまりに美化され、英雄視されてはいないだろうか。印象派とその絵画を、苦闘する前衛芸術家のイメージや美的、造形的な革新性という側面ばかりから捉えるのではなく、実態に即したその人間像、財政的な問題、彼らを取り巻く社会や制度などの視点から再検討してみたい。具体的には、画家たちの出身階層や家柄、絵を売る必要性や価格、男女関係(モデルや娼婦)、評価や名誉をめぐる闘争等々を調査、考察することによって、印象派の生きた姿を丸ごと捉え、冷静かつ的確な理解につなげていく。ただし、人間的、現実的な側面を浮き彫りにするとしても、露悪的なゴシップ趣味は避けたいし、「人間」で「作品」を説明するような還元主義にも陥りたくない。印象派の生き様を解明し、自ずから芸術家と作品の理解に深みや奥行きを与えるものになればと思う。
授業に参加するに当たっては、印象派に関する一次情報を満載した基本文献John Rewald, The History of Impressionism (1946)を、少なくとも日本語訳(ジョン・リウォルド『印象派の歴史』(2004年)で目を通しておくことが望まれる。ゼミではまず、Anne Martin-Fugier, La Vie d’artiste au XIXe siècle (2007) を輪読し、19世紀フランスの芸術家生活の基礎知識を得てから、各自が担当する印象派画家を決めて発表するので、フランス語の読解能力も必要となる。

[Aセメスター]ファンタン=ラトゥール研究─比較芸術の視点から
(=シニア比較芸術「芸術作品分析法IV」)
19世紀後半のフランスの画家アンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)を、地理的かつジャンル横断的な芸術交流の視点から再検討することを目的とする。エドゥアール・マネと同世代にパリで活躍したファンタン=ラトゥールは、オルセー美術館が所蔵する芸術集団肖像画が知られてはいるものの、その重要性にも関わらず全体像が十分研究されているとは言えない。実際、英語圏やドイツ語圏の芸術家と交流したり、文学者や音楽家とも接点を持っていたファンタン=ラトゥールの芸術は、異なる地域・文化の間を往還したり、異なる芸術ジャンルを越境したりする要素を多分に含んでいた。このようなファンタン=ラトゥールの芸術を、国際的な交友関係や芸術ジャンルの融合という「芸術交流の視点」から、具体的な作品(肖像画、静物画、幻想画)や資料に即して捉え直したい。課題となるテーマは、「芸術家像と交友関係」(ジェイムズ・ホイッスラー、オットー・ショルデラー等)、「静物画とイギリス」(エドウィン・エドワーズ等)、「音楽と美術」(ワーグナー、ベルリオーズ等)、の三つを考えている。美術、音楽、文学に興味のある学生の参加を期待したい。
比較ナラトロジーII
(伊藤徳也)
[Sセメスター]「生活の芸術」と周作人:中国のデカダンス=モダニティ
今年度のSセメスターは、以下のように、例年とは違う特別講義を行う。
伊藤徳也『「生活の芸術」と周作人─中国のデカダンス=モダニティ』の前半を一字一句ゆっくりと解説していく。出版が7年前、早いところは20年以上前に書いた部分なので、修正、補充などアップデートが必要なところが多い。そうした補正を行いながら、当時具体的に、どのように書き進めたのかをなるべく具体的に、学生諸君の研究に資するように配慮して紹介する。アイデアをどう思いつき、誰の何を読み、誰とどう意見を交わし、誰からどのようにどう刺激を受けたり、示唆を受けたか。また、何をどこで、どんな苦労をして、どう調査し、何がわかって、何がわからず、何の究明を諦めたか、何をどう整理し、何をどう判断して、結局何をどう書いたか、何を書かなかったか等など、当時の状況、当時の研究生活をなるべく詳細に具体的に思い出して語ってみたい。
私個人としても、「デカダンス=モダニティ」という概念装置を再検討したい。モダニティをめぐる批評理論や重要文献、日本、中国の「近代」”現代”をめぐる多くの言説等を踏まえ、20世紀初頭から日中比較文化史を激動の歴史の真っ只中で考え抜いてきた周作人の知的経験に即して、この概念を確実に基礎づけたい。

[Aセメスター]武田泰淳と竹内好の戦前・戦中・戦後
(=シニア比較芸術「比較文学比較文化論演習I」)
戦前、戦中、戦後の武田泰淳と竹内好の社会史的文化史的歩みをたどる演習。
二人は東京帝国大学支那文学科で知り合い、1934(昭和9)年、中国の文人周作人訪日歓迎会を機に「中国文学研究会」を設立した。いずれも、中国および中国人と深い関わりを持った。戦中、竹内は『魯迅』(1944年、日本評論社)、武田は『司馬遷』(1943年、日本評論社)を刊行、いずれも、従軍して中国に赴いたことがあり、敗戦を中国で迎えた。戦後、竹内は翻訳家、評論家として、武田は作家として活躍したが、戦後の彼らの著述の一部には、戦前戦中に負ったらしい癒やし難い深い精神的傷が窺える。戦争を含む激動の現代史をくぐり抜けた彼らの体験を、可能な限り、具体的に知りたいと思う。
戦中戦後の悲惨悲壮な生々しい実体験談や見聞録、ルポルタージュは、戦後生まれの私たちの胸を打ち、私たちを激しく揺さぶる。昨今限りなく精緻化するポリティカル・コレクトネスで武装した倫理的言説とは大違いである。そして、大正時代のいわゆる「支那趣味」も、1990年代以降の日本人作家の作品の中の「中国」も、いまひとつ、表面的で軽薄な印象を拭えない。竹内と武田の著述を読むことを通して、日本文学と中国との関わり方をさまざまに考えてみたい。具体的には、渡邉一民『武田泰淳と竹内好 近代日本にとっての中国』の精読を通して二人の歩みを確かめていくが、今学期は昨年度読み終えた戦前戦中部分を参照しながら、戦後部分を読んでいく予定。学部生と合同で行う合併授業。
比較思考分析II
(古荘真敬)
[Sセメスター・Aセメスター]アーレント『精神の生活』を読む
前学期に引きつづき、アーレントの最後の著作 “The Life of the Mind”の第1巻 Thinkingを、その内容を批判的に吟味しながら、精読していく。「思考」という、われわれ各自の基本的営みをめぐる徹底的な考察を試みていきたい。
比較文学比較文化演習I
(田口一郎)
[Sセメスター・Aセメスター]漢詩・漢文(中国古典詩文)の読解
『明七才子詩集掌故』の閲読を通して,古典詩文の読解,古典注釈の方法を学びます。テキストは早稲田大学図書館蔵本
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko11/bunko11_d0153/「明七才子詩集掌故」でgoogle検索をかけると一番上に出てきます)等をweb上で見ることが出来るので,ご確認下さい。
『明七才子詩集掌故』は,明代の古文辞派と呼ばれる詩人たちの詩に,江戸の学者が注釈をつけたものです。

比較文学比較文化演習II
(出口智之)

[Sセメスター・Aセメスター]小説論を書くために
日本近現代の小説について、文学研究としての論文を書くとはどういうことか。単なる感想文でも二次創作でもなく、客観的な姿勢と方法によって学術的評価に足りうる論文は、いかにして書きうるのか。そして、そのためにはどのような方法と手続きを学ぶ必要があるのか。
本授業では、小説の読解を深化させ、同時に様々な資料や理論を活用して小説に関する一編の論文を仕上げる営みを実体験し、また他の受講生の作業を相互に検討することによって、最終的には学術的な小説論を書きうるスキルを身につけることを目標とする。特に重視されるのは、資料や先行研究の調査方法と、テクストの読みを深めて新しい読解を提出しうる発想能力である。
全受講生が少なくとも一篇の小説を選定し、それに関する論文を仕上げてゆく。対象とする小説は日本近現代文学から選び、長篇・短篇の別は問わないが、自身が専門とする作家・作品以外から選ぶこと。同時代・周辺の作家であればかまわない。何度かの発表とピアレビューなどを繰返し、最終的には当該小説に関して、学術的評価にたえうるレベルの論文を仕上げる。調査・思考・執筆などに少なからぬ時間を要するので、基本的にはS・Aセメスターを通じて一貫した授業として行われ、受講生も双方を履修することが望ましい(必須ではない)。
比較文学比較文化演習III
(今橋映子)
[Sセメスター]文学芸術研究における展覧会カタログの意味―駒場博物館資料室実習
(=シニア比較芸術「比較文学比較文化論演習III」)
展覧会カタログは、文学、美術および文化研究の最先端の動向や、研究成果を知る絶好の資料である。それに加え、価格や装釘、デザインなどの面においても、展覧会鑑賞者に様々な楽しみをもたらしてくれる絶好の「商品」でもある。
駒場キャンパスの美術博物館には、専ら展覧会カタログ(文学、美術、歴史等)を約17000冊収蔵する資料室があり、近年ではその質と量から専門家からも高く評価されている。本授業参加者は、通常閉架スペースであるこの資料室に入庫できる資格が与えられる。
本授業では、そもそも展覧会および展覧会カタログとは一体何なのかを多角的に検討する。そしてしばしば展覧会カタログが、文学芸術研究の最前線を知るための基本資料となることを理解し、各自の研究に有機的に活かす方法を考えていきたい。本授業は大学院とシニアの合同授業であるが、双方共に益の多い演習となるよう工夫されている。授業参加者は、展覧会カタログの探索方法、読解法、分析及び批評方法を順次会得していくことになろう。
さらにこの授業では、展覧会および展覧会カタログの「批評」が社会的にもいかにあるべきかを考え、討論していく。
そのため、駒場博物館で4月から開催される予定の展覧会カタログに関する展覧会を有効活用する予定である。同時に4月以降東京及び近県で開かれる重要展覧会にも着目していく。
参加者に特に予備知識は必要とされないが、文学、視覚芸術、建築、歴史などの展覧会に深い関心を持っていることが肝要となる。また、資料室に直接立ち入る授業のため、関係する職員の方々ときちんと接することのできる参加者が期待される。
比較文学比較文化演習IV
(寺田寅彦)
[Aセメスター]Littérature et image au XIXe siècle
Objectif / Vue d’ensemble du cours : Au XIXe siècle, quel rapport existe-t-il entre la littérature et l’image ? Celle-ci fascine souvent celle-là (et vice versa) même si le XIXe siècle n'a pas inventé l'image, comme il n'a pas inventé la littérature, comme il n'a pas inventé le rapport entre la littérature et l'image, comme d'ailleurs il n'a pas inventé la présence d'image en œuvres littéraires. Nous devons reconnaître toutefois que ce siècle qui avait deux ans à la naissance de Victor Hugo a bouleversé, rénové et transformé le lien intime entre ces deux domaines qui date de l'antiquité. Nous allons examiner dans notre cours la représentation littéraire et artistique en nous appuyant sur un phénomène social et culturel.
比較文学比較文化演習VI
(石原剛)
[Sセメスター]Henry Jamesの長編小説 The American(1877)を米欧比較の視点から読む
Henry JamesのThe American(1877)は事業で成功したアメリカの青年実業家がヨーロッパ文化の洗練を身につけるべく主にフランスに滞在する話です。英米の優れた作品を英語の原文で味読する愉しみを経験してもらいたいと思います。また、本作はヨーロッパの伝統を合わせ鏡にすることでアメリカ人のアイデンティティを浮き彫りにするというジェイムズ文学の原型が表れた作品で、必ずしも英米文学を専門としない場合でも、米欧文化比較の問題に関心がある受講生には興味深い作品となるはずです。全編を読み終わった後に余力があれば、同作品を論じた代表的な批評も読む予定です。

[Aセメスター]日本の作家たちが語るアメリカ:戦後編
敗者という立場から直面せざるを得なかった「アメリカ」を戦後日本の作家たちはいかに眼差したのか。種々の戦後作品を材料に、同時代の日米関係にも目を配りつつ議論します。解放者であり、抑圧者であり、憧れの対象であり、近しくもあり、かつ異質な隣人でもあったアメリカへの戦後日本人のいわく捉えがたい屈折した思いをそれこそ「捉える」ヒントとなればと考えています。
超域文化科学特別講義II
(加藤磨珠枝)
[Sセメスター]キリスト教美術にみる諸宗教
西洋古代後期から中世におけるキリスト教美術を中心に、その発展の歩みをたどりつつ、ユダヤ教やイスラームといった他の諸宗教美術との相互関係について学ぶ。それをもとに、キリスト教中心主義ではない広い視点から、西洋中世美術の理解を深めることを目的とする。
超域文化科学特別講義II
(古田徹也)
[Sセメスター]アンスコム「現代道徳哲学(Modern Moral Philosophy)」を読む
G. E. M. アンスコムが1958年に発表した論文「現代道徳哲学(Modern Moral Philosophy)」は、その帰結主義批判と、徳倫理の先駆けとなる議論展開によって、現代倫理学における画期的な成果として知られている。しかし、その難解さゆえに、肝心の内容は実はあまり理解されていない。
本授業では、二次文献も随時参照しながら、この論文を冒頭から丁寧に読み解いていく。それによって、功利主義や徳倫理等の倫理学理論一般についても理解を深めることができるだろう。
超域文化科学特別講義II
(藤井 省三)
[Sセメスター集中]魯迅と日本・欧米文学
魯迅(ルーシュン、ろじん、1881~1936)は1902年の日本留学前後から夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、トルストイらの影響を受けながら、独自の文学を形成した。そのいっぽうで、1930年代からは多くの日本作家に大きな影響を与えてきた。本講義では、夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、村上春樹、トルストイ、バーナード・ショー、張愛玲、莫言を取り上げて、魯迅との影響関係を考察したい。また映画化作品『阿Q正伝』(陳白塵改編・岑范監督、1981)も紹介したい。

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