10月にコロンビア大学で行なわれた「教養の基盤——類書を学び、類書で学ぶ」と題するワークショップに参加する幸運に恵まれました。コロンビア大学大学院において二年間日本文学を学ぶなかで、古代日本における幼学書の役割について興味をいだき、幼学書は中国文化の受容にとりわけ重要な意義を有していたと感じるようになりました。この画期的なワークショップは、この件について神野志隆光・齋藤希史両教授のお考えを聞くまたとない機会で、私自身の考えをさらに精密にするために大いに役立ちました。私たちは類書と古注を通じてテクストの問題点に取り組んだのですが、この対話方式のワークショップは当時の知識層が実際にどのようにテクストに関わったのか、その筋道を生き生きとえがきだすものでした。また、東アジア全域の文学的コンテクストのなかで類書などが果たした中心的役割についての示唆に富む議論を両教授がなさいました。文学研究の具体的な方法論についての新しい認識を得ただけでなく、中国的教養の普及と、特定のテクストを超えて相互に関連した文化的知識のネットワークを作り出した類書や注釈のありようについて深く考えさせられました。
|